事業承継とは、経営する事業を後継者に引き継ぐことを言います。
中小企業では、引き継ぐべき財産である会社の財産と経営者個人の財産の区別、後継者を誰にするか、つまり子供などの親族にするのか、従業員にするのか、第三者にするのか、どのような方法によるのか、更に相続税や贈与税などの税の問題などがあります。
事業承継についてよくあるご質問
- 事業を長男に承継しようと思いますが、どのような方法で行いますか。
- 後継者であることを従業員や取引先、金融機関に早くから周知させることや、後継者としての教育が必要です。
また、株式や会社財産を後継者に集中するために、生前贈与を行うことや、遺言書を作成して株式や会社財産を遺贈することが考えられます。
しかし、長男さん以外の相続人が、生前贈与の場合は特別受益である、あるいは遺贈の場合は遺留分が侵害されたとして、権利を主張することがあり得ます。
これに対する対処は、贈与や遺言を行う前に弁護士に相談されることをおすすめします。 - 事業承継を株式の売買の方式で行う場合の譲渡価格はどうやって決めますか。
- 株価の算定方法には、純資産方式、収益方式、比較方式があります。
純資産方式は貸借対照表に基づき客観的でわかりやすいのですが、将来の成長などを考慮していません。
収益方式は、キャッシュフローなどに基づいて企業の将来の成長などを考慮していますが、算定方法が恣意的になりやすい面があります。
比較方式は規模や業種で類似する会社との比較による方法ですが、比較対象の会社が適切でない場合は問題となります。どの方法を採用するかは当事者の合意によりますが、複数の方法の平均値を取ることもあります。 - 第三者に対する事業承継は何かメリットがありますか。
- メリットは、承継させる側として、後継者がいない場合も承継が可能となり、金融機関からの借入金の保証人の地位を免れ、譲渡代金に「のれん」のような利益が上乗せされる場合があることなどがあります。
また、引き継ぐ側として、新たな分野への進出を行えることや、経営基盤の拡大ができるなどがあります。従業員としては雇用が安定することです。 - 第三者に対する事業承継には法律上どんな方法がありますか。
- まず「合併」と「企業買収」があります。
合併とは複数の会社が1つに統合することです。合併では従業員との雇用関係や、会社の債務がそのまま引き継がれる点で簡便です。
企業買収は、株式譲渡と事業譲渡があります。株式譲渡は、承継される側が持っている株式を承継する側に譲渡することです。従業員との雇用契約や会社の債務は従前の会社に残るので、簡易迅速な手続です。
事業譲渡は、会社の事業を他の会社に譲渡することです。譲渡する事業の範囲は自由に設定でき、雇用契約や債務の引き継をしないことができます。 - 第三者に事業承継をすることについて、従業員には早期に説明した方がよいですか。
- 第三者に対する事業承継があった場合、従業員の賃金などの労働条件は承継後の会社の経営状態によって変わってきます。
そこで、従業員への説明を早期にすると、不安や誤解を与えて、反発した従業員が大量に退職したり、労働組合を作って団体交渉を行ったりすることがあり、事業承継に失敗することがあります。
従業員への説明は最終的な契約を締結する直前や直後が望ましいと言えます。
-
お電話でのお問い合わせ
-
メールでのお問い合わせ