よくあるご質問FAQ

弁護士相談について

法律相談をした後、実際に依頼しなくてもよいのでしょうか。
法律相談でお話を充分うかがった後、方針と費用についての見積をお出してご説明をいたします。これについて了承された場合は委任契約を締結して依頼となりますが、そうでない場合は法律相談で終了します。
法律相談をしたら必ず引き受けてもらえますか。
相談内容について、法律上の権利が認められない場合や、事実については証拠がない場合があります。この場合は、ご希望の解決が得られないことがあり、了承いただけない場合は受任を辞退することがあります。
法律相談30分5,000円とのことですが、30分を超えた場合の料金はどのようになりますか。
法律相談は30分で5,000円であり、30分を超過して1時間までの場合は1万円、1時間を超過して1時間30分までは1万5,000円となり、それ以上も30分ごとに計算します。
消費税は別途かかります。
依頼から解決までの所要時間はどのくらいでしょうか。
相手方と示談交渉をする場合は、おおむね3ヶ月~6ヶ月、調停は6ヶ月~8ヶ月、訴訟は1年~2年(第1審)ですが、個別の事情によって長短に差があります。
法律相談の際には何を持っていけばよいでしょうか。
①相談にかかわる書類、写真、録音などの証拠、②印鑑、③身分証明書(運転免許証)です。その他必要なものは、ご予約の場合に具体的にお知らせします。

取扱業務について

個人向け取扱業務

医療

病院の顧問をしている弁護士なら、病院やお医者さんの味方になるのではないですか。
当事務所に病院の顧問先はありますが、そのために病院や医師に有利な活動をすることはありません。
なお、依頼者が当事務所の顧問先の病院を相手方とする事件については、利益が相反するため、ご依頼を受けることそれ自体ができません。
家族が入院中に亡くなりました。医療過誤を疑っているのですが、どうすればよいですか。
ご家族が亡くなられるまでの経緯について、時間の流れに沿ったメモを作成いただき、当事務所までご連絡ください。そのうえで法律相談を行い、事実の経緯を確認して、適切な措置を講じます。
医療機関からカルテなどの資料の写しの交付を受けていただくほか、場合によっては、医療機関に対して、訴訟を起こす前に証拠保全手続を行います。
証拠保全手続とは、訴訟を起こす前にカルテなどの資料が改ざん・廃棄されてしまうことを防ぐため、裁判所を通じて、事前にその確保を図る手続です。
家族が病院で手術を受けた結果亡くなりました。そのとき、医師は「この度は申し訳ありませんでした」と謝罪していました。これはミスがあったことを認めたことにならないですか。
医師や病院関係者が患者やその家族の前で謝罪の言葉を口にしたとしても、そのことがただちに過失があったことを認めることにはなりません。
過失の有無は、カルテやその他の診療記録を確認し、事実を確認して、判断していくことになります。
病院が「あの手術にはミスはなかった」と説明している以上、ミスはなかったということではないのでしょうか。
医療機関が手術にミスはなかったと説明していたとしても、法律的に判断した結果、それが事実と異なる場合もあります。
一般的な事件の進め方について教えてください。
まず、法律相談を実施して必要なアドバイスを差し上げます。
その後、ご依頼を受けた場合は、まずは事件の内容の調査から着手し、証拠保全手続などにより証拠を確保したうえで、医師などの過失が法律的に認められるかどうかを過去の裁判例に照らして判断します。
そのうえで、損害賠償請求に着手するかどうかを決します。

労働

一般的な事件の進め方について教えてください。
まずは法律相談を行い、必要なアドバイスを差し上げるとともに、たくさんある手続のうち、どれを選択するか方針を立てます。
個人の労働者の方からのご依頼の場合、労働審判手続を選択することが多く、これにより迅速かつより有利な結果を得ることができる場合が多いです。
労働審判とは何ですか。
個人の労働事件について、最大3回までの裁判で解決を図る裁判所での手続です。
一般的な民事訴訟と比較して、手続の進行は非常に早く、短期間のうちに労働者に有利な結論を得られることが多いので、労働者側がとる手続として有用なものです。
労働者から外部の労働組合を通じて団体交渉を申し込まれたのですが。
労働者側の団体交渉の申し入れに対しては、誠実に対応する必要があり、それは外部の労働組合を通じた場合でも同様です。当事務所はこのような団体交渉に参加し、交渉を担当した実績もあります。
個人事業主ですが、問題のある社員を解雇したいと考えています。どうすればよいですか。
経営者側が、いかに問題があると考えている社員であっても、いきなり解雇などの手続をとれば、それは不当解雇として法的なトラブルを生む可能性が非常に高いです。法律的な手続にのっとって、対処していく必要があります。
事業をやっていますが、就業規則のチェックなど、法律的な事務が頻繁にあり、いつでも気軽に相談できる弁護士がいて欲しいです。
当事務所は、個人事業主の方を対象とする顧問契約にも対応しており、就業規則や契約書のチェックなどのご相談について、毎月の顧問料のみで対応できます(ただし、複雑な調査を要する場合はこの限りではありません)。顧問契約につきましては、こちらをごらんください。

交通事故

車にはねられ、損害賠償手続を弁護士さんに依頼したいのですが、着手金を支払うお金がありません。
あなたやあなたのご家族が加入されている保険の内容によっては、弁護士費用特約により、弁護士の費用が保険によりカバーされる可能性があります。弁護士費用特約によれば、法律相談料や、着手金、報酬金など、幅広く弁護士に支払うべき費用が補償されます。保険の内容をご確認ください。
交通事故で受けたけがの痛みがまだ続いているのですが、保険会社からこれ以上の治療費は保険で支払えないと告げられました。どうすればいいですか。
けがの治療が終わらない段階で、保険会社から治療の打ち切りを示唆される場合があります。現時点での治療の中断が適切であるかどうかは一概に言えませんが、一般的に言えば、医師が治療の完了を宣言せず、現に痛みが続いている状態での治療の中断は、適切とは言えません。早期に弁護士に相談をするべきです。
保険会社から示談金の提案がありましたが、その内容が適切と言えるかどうかわかりません。
保険会社からの示談金の提案は、被害者にとって不利な内容であることもよくあり、弁護士からみてより高額の支払いを提示するべき場合があります。このような場合も、早期に弁護士に相談することをお勧めします。
事故に遭ってからずっと、くびのあたりの痛みがとれません。レントゲンやCTには何も出ておらず、これは後遺障害にあたらないのではないでしょうか。
このような場合でも、後遺障害として認められる場合があります。まず、自賠責保険の後遺障害として認定してもらう必要があります。当事務所ではこのような場合においても、後遺障害としての認定をとり、高額の損害賠償金を受け取ることに成功しました。
道路の陥没に自動車のタイヤをとられて車が破損しました。どこかに訴えることはできないですか。
このような場合、道路を管理する都道府県に対して損害賠償を請求することになると考えられます。当事務所では、これと同様の場合において、車両の修理費用を支払わせることに成功しました。

債務整理・破産

破産するのにもお金がかかると聞きました。お金がないから破産するのに、着手金が必要だなんて理不尽です。
法テラスの利用を検討してください。法テラスとは、日本司法支援センターの愛称で、弁護士の利用が必要であるにもかかわらず、資金の問題でそれが困難な方のために、弁護士費用を立て替えてくれる機関です。法テラスの援助契約を利用することにより、当事務所に手続を依頼することが可能になる場合があります。
破産すると、戸籍にそのことが記載されてみんなに知られてしまうのではないですか。
破産しても戸籍や住民票に破産したことが記載されることはありません。破産した場合、官報という国の機関紙にその事実が記載されますが、一般の方は官報に目を通すことはなく、破産した事実が周囲に知られることはありません。
多数の債権者に債務を抱えていますが、がんばって建てた家を手放したくありません。どうにかなりませんでしょうか。
民事再生手続をとることが考えられます。民事再生を申し立て、債務を大幅にカットしたうえで、住宅を手元に残すことができる場合があります。まずは弁護士にご相談ください。
サラ金に利息を払い過ぎていたと思います。過払金の支払いを請求してもらえますか。
過払金とは、債権者が法律に違反して支払いを受け過ぎた部分をいい、債務者はその取り戻しを債権者に請求することができます。過払金の有無を調べるためには、その取引の履歴を調査することが必要であり、履歴は債権者から取り寄せて検討することになります。当事務所でも、過払金の調査や取り戻しの請求手続を実施しています。
破産すると、あらゆるものを差し押さえられてしまうのですか。
破産した場合でも、生活に最低限必要とされる財産については保持することができます。今日、破産した場合でも、家具などの日用品が処分の対象となることはまれです。

離婚

暴力を振るう夫から逃げて別居しています。離婚したいのですが、そのための弁護士費用どころか、今後の生活費もありません。どうしたらいいですか。
まず、法テラスの利用を検討してください。法テラスとは、日本司法支援センターの愛称で、弁護士の利用が必要であるにもかかわらず、資金の問題でそれが困難な方のために、弁護士費用を立て替えてくれる機関です。
法テラスの援助契約を利用することにより、当事務所に手続を依頼することが可能になる場合があります。
次に、生活費については、別居している相手方にその支払いを請求することができます。これを婚姻費用といいます。
婚姻費用の額は、大まかに言って、子どもの数、年齢のほか、相手方とあなたの収入の額で決定されます。
夫の名義で購入した不動産ですが、これは離婚しても夫のものになるのですか。
離婚する場合、夫婦間で築き上げた財産を分割する財産分与の手続が併せて行われることがあります。
夫の名義の不動産であっても、夫婦で築き上げた財産と評価される場合、分与の対象となります。
私たち夫婦は、籍を入れていないのですが、このたび、関係を解消して別々に暮らすことになりました。このような場合、どのようなことが言えますか。
婚姻届を出していないのに、夫婦同然の暮らしをしている関係を内縁といいます。
内縁の場合でも、法律上の離婚と同様の扱いがなされ、財産分与などの請求をすることができます。
夫が長年にわたって浮気していたことがわかったので、離婚を求めたいのですが、夫と関係を結んだ女性が許せません。夫ともども何か法律的な手段をとることはできないですか。
夫に対する離婚や慰謝料の請求と同時に、浮気、すなわち不貞の相手方に対しても慰謝料の請求をすることができます。
離婚の手続について教えてください。
当事者間で話し合いがつかない場合、まずは家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員の立会のうえで協議が行われます。
調停で協議がまとまらない場合、訴訟手続により離婚の可否や、離婚する場合の慰謝料などの諸問題についても判断されます。

遺言・相続

父の作成したとされる自筆の遺言書が出てきたのですが、父は亡くなる数年前から認知症で判断能力を失っており、遺言書の内容が父の意思に基づくとは思えません。どうすればよいですか。
この遺言書は、遺言を作成するために必要な能力なく作成されており、無効となる可能性があります。このような遺言書に基づき遺贈された財産について、裁判手続を通じて返還を求める必要があります。
遺言を残したいのですが、私を侮辱した長男には、一切の遺産を残したくありません。どうすればよいですか。
遺言に、長男を相続させない内容を記載するほか、長男を相続人から廃除(相続人の資格を失わせる手続)する旨記載することにより、長男に遺産を相続させないようにする意思を示すことができます。
遺産分割の手続について教えてください。
故人の遺産は、遺産分割協議により、話し合いで、その遺産をどの相続人が引き継ぐかを協議して決定することが原則です。話し合いが整わない場合、家庭裁判所で遺産分割調停を行い、裁判所の関与の下、協議を行います。調停でも話し合いがつかない場合、審判と言って、裁判所が遺産の配分を決定する手続に入ります。
父が亡くなった後、相続人の間で遺産の分配について話し合いがまとまらず、裁判所への申立を考えています。弁護士費用はいくらくらいかかりますか。
当事務所の報酬規定(詳細はこちら)によると、遺産分割事件の着手金は、請求する相続分の時価相当額を基準に決定されるのが原則です。また、報酬金は、弁護士の事務処理により確保した相続分の時価相当額を基準に決定されるのが原則です。
例えば、遺産分割を請求する相続分の時価が300万円、弁護士の活動により確保した相続分の時価が150万円であった場合、着手金、報酬金ともに24万円(税抜)となるのが原則です。
父が亡くなったのですが、私に一切の相続をさせないとの内容の遺言書があることがわかりました。私は父の遺産を相続できなくなるのですか。
遺留分減殺請求権を主張し、遺産のうち、最低限確保されるべき部分の確保を主張することができます。

刑事

身に覚えのないことで逮捕されてしまいました。警察官からは、「認めればすぐに身柄を解放してやる」と迫られ、警察官が作成した調書にサインを求められています。
警察官があなたを取り調べて作成する調書に、あなたが署名して指印を押した場合、その調書に記載された内容は、裁判において真実として取り扱われてしまい、それが事実ではないと主張することは極めて困難になります。
このような警察官の誘導には、絶対に応じるべきではありません。
万引きをして警察に逮捕されましたが、警察官から被害店と示談した方がいいといわれています。それほど示談は大切なのですか。
窃盗事件において、被害者の損害を回復させる示談という手続は、大変重要なものであり、これにより事件の情状が大きく変わります。示談の有無により、起訴されてしまうかどうかが分かれる場面もあります。
当事務所は、様々な事件から得られた経験に基づき、交渉について高い技術を有しており、示談交渉について最善を尽くします。
警察に逮捕されましたが、保釈という手続で身柄を解放されると聞いたのですが。
逮捕後、起訴されるまでは、保釈は認められません。
起訴された後、裁判所の保釈許可決定を受けて、定められた保釈保証金を支払うことで、身柄が解放されます。
保釈保証金は、保釈中に逃走などをしなければ、そのまま返還されます。
知人が逮捕されたのですが、警察に面会に行こうとしたところ、面会禁止といわれました。状況を確認したいのですが。
弁護人には接見交通権が認められており、身柄を拘束されている人と立会人なく面会することができます。
これは、面会禁止の措置がつけられている場合も変わりません。弁護士に依頼して、接見してもらうべきでしょう。
今、警察に身柄を拘束されているのですが、私の部屋に置いてある覚せい剤を弁護士に依頼して処分してもらわないと、私が覚せい剤の所持の罪にさらに問われてしまいます。弁護士に処分をお願いすることはできますか。
弁護士に証拠の隠滅を指示することはできません。
弁護士自身が証拠隠滅の罪に問われるほか、弁護士倫理に違反するためです。

法人向け取扱業務

企業法務

商品の仕入れ先が期日までに納品してくれなかったために、当社がその商品を販売先に納期までに納入できませんでした。販売先から損害賠償を求められていますが、どうすべきでしょう。
まず、貴社と仕入れ先との間の契約書と、貴社と販売先との契約書を確認してください。契約書を作成していないときは、契約前の相手方との交渉が重要となります。
これらを補完するものとして、民法の規定があります。弁護士に契約書や、相手方とのやりとりのメモ・メールなどを見せて相談すればスムースに対処することが可能です。
コンプライアンスに違反しないようにするにどうすればよいですか。
コンプライアンスとは、企業が法律や企業の倫理を守ることを言います。いわば当たり前のことではありますですが、企業の不祥事はあとを絶ちません。原因は経営者の認識不足や従業員教育の不徹底があります。
防止策としては、マニュアルの作成、内部通報制度の設置、社外役員の設置などがあります。弁護士の企業内研修では経営者や従業員の認識を深めることができます。
また、弁護士がマニュアルの作成やチェックをするとか、内部通報の窓口になる、あるいは、社外役員として弁護士が就任することなどによって、違反しないように効果的な対応ができます。
当社の株式を持っている叔父が突然株主総会で経営について質問をすると言ってきました。いままで総会で質問が出たことはないのですがどうしたらよいですか。
株主総会の議事の方式には法律に詳しい定めはありませんが、手続を間違えば決議方法の法令違反として決議取消事由となり得ます。
通常は事前に作成したシナリオによって行われるのが一般であり、弁護士は法令や定款と照合してチェックやリハーサルを行うことができます。また、混乱の予想されるときは弁護士が議長補助者として同席することが考えられます。
当社には就業規則がありますが、長年従業員との間で就業規則とは異なる取り扱いをしています。これはどのように扱うべきですか。
職場や、労働者と使用者の間で長期間反復継続された取り扱いを「労使慣行」と言います。
労使慣行が就業規則と異なる場合でも、これが労働者と使用者の間で一定の範囲で長期間反復継続され、ルールであると認識されている場合は、就業規則より優先することがあります。
裁判例もありますので弁護士への相談をお考えください。
取引先に対する債権を回収するにはどのようにするべきでしょう。
事前に行うべきことは、取引先の登記や信用情報等によって信用性を調査すること、契約書を作成して支払条件(現金払等)、期限の利益喪失約款(差押えを受ける等すると分割払が一括払になる約款)、違約金等を定めること、連帯保証人や担保をつけること等があります。
これに対して相手が支払いを怠った後に行うべきことは、分割払いの合意をすること、このとき公正証書を作成すること(不払いの時は強制執行できます)、相手の商品等で支払ってもらう合意をすること(代物弁済契約)、債権を譲渡すること等です。
また、裁判手続として調停や訴訟の申立をすること、簡易な手続 である支払督促や少額訴訟を申立ること等があります。弁護士に事前に相談すれば紛争の予防になり、また、事後に相談すればスムーズに回収が進むことになります。

人事・労務

従業員が仕事を自宅に持ち帰って残業をしていますが、自宅で行った仕事について割増賃金を支払う必要があるのでしょうか。
労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間をいいます。自宅で残業する場合であっても、使用者やこれに代わって指揮命令を行う上司が残業を指示した場合は労働時間となる可能性があります。
これに対して労働者が自分の意思で自宅に持ち帰ったときは労働時間にならないと考えられます。後者の場合、自宅で残業を行う時間が労働時間にならないので割増賃金を払う必要はありません。
判断が微妙であり詳しくは弁護士にご相談ください。
協調性を欠いて管理職として不適任な従業員を会社から排除するために、就業規則に基づいて関連会社に出向させようと考えていますが問題がありますか。
就業規則等に使用者が出向を命じることができるとの明確な規定があり、出向先の労働条件等について労働者の利益に配慮した具体的な規定を定めていれば、出向を命じることはできます。
但し、出向命令が権利濫用の場合は違法とされており、業務上の必要性があるか、対象者の選定が公平か、動機目的が不当ではないか等から判断されます。
本件では、業務の必要性があるか、対象者の選定が公平か、動機目的が正当か等で疑問があり権利濫用になる可能性があります。命令を発する前に弁護士に相談される方がよいと思います。
同期に比べて昇進が遅いのは差別的であると主張する従業員がいます。評価の前提となった事実に誤りがあるそうです。どう対処すべきでしょうか。
労働者の昇進は使用者の裁量的な判断が認められているので昇進について同期と差が出たと言うだけでは差別とはいえません。
しかし、男女雇用機会均等法違反や組合員であることによる差別のような不当労働行為等の場合は違法となり得ます。
また、人事考課が公正でない場合は、人事権の濫用となることがあります。例えば、人事考課制度を整備しないで恣意的に評価していたり、不当な動機によって低い評価をした場合や、本件の従業員の主張のように評価の前提となる事実について誤りがあった場合です。労働法に詳しい弁護士にご相談されるのが良いと思います。
従業員が会社の金銭を横領しました。どのような措置を取るべきですか。従業員の解雇は容易にできないと聞いたことがありますが。
確かに通常の場合、従業員の解雇は容易にはできません。しかし、従業員が金銭を横領した場合は、金額が多いか少ないかに限らず、懲戒解雇を有効とした判例が多数下されています。
また、民事上は従業員に対して着服した金銭について不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求ができます。
更に、刑事上は、従業員の行為は業務上横領罪に該当する可能性があるので、警察に対して被害届を出したり告訴状を出して刑事告訴することが考えられます。
どのような手段でどの程度まで責任をとらせるのか、再発防止のためにどんなシステムを作るべきか、弁護士に相談されるのが よいと思います。
社員が長時間労働によって鬱病になり、無断欠勤や早退を繰り返しています。解雇できますか。
問題の行動の原因が鬱病である場合は、欠勤または休職などによる治療の機会を与えるべきです。これに対して治療を拒否したり休職期間中に治療しないなど、回復の可能性がない場合は解雇の検討が可能です。
但し、業務に起因する鬱病は、業務災害になるので、治療のために休業する期間及びその後の30日は原則として解雇できません。類似の裁判例もありますので弁護士への相談をお考えください。

事業承継

事業を長男に承継しようと思いますが、どのような方法で行いますか。
後継者であることを従業員や取引先、金融機関に早くから周知させることや、後継者としての教育が必要です。
また、株式や会社財産を後継者に集中するために、生前贈与を行うことや、遺言書を作成して株式や会社財産を遺贈することが考えられます。
しかし、長男さん以外の相続人が、生前贈与の場合は特別受益である、あるいは遺贈の場合は遺留分が侵害されたとして、権利を主張することがあり得ます。
これに対する対処は、贈与や遺言を行う前に弁護士に相談されることをおすすめします。
事業承継を株式の売買の方式で行う場合の譲渡価格はどうやって決めますか。
株価の算定方法には、純資産方式、収益方式、比較方式があります。
純資産方式は貸借対照表に基づき客観的でわかりやすいのですが、将来の成長などを考慮していません。
収益方式は、キャッシュフローなどに基づいて企業の将来の成長などを考慮していますが、算定方法が恣意的になりやすい面があります。
比較方式は規模や業種で類似する会社との比較による方法ですが、比較対象の会社が適切でない場合は問題となります。どの方法を採用するかは当事者の合意によりますが、複数の方法の平均値を取ることもあります。
第三者に対する事業承継は何かメリットがありますか。
メリットは、承継させる側として、後継者がいない場合も承継が可能となり、金融機関からの借入金の保証人の地位を免れ、譲渡代金に「のれん」のような利益が上乗せされる場合があることなどがあります。
また、引き継ぐ側として、新たな分野への進出を行えることや、経営基盤の拡大ができるなどがあります。従業員としては雇用が安定することです。
第三者に対する事業承継には法律上どんな方法がありますか。
まず「合併」と「企業買収」があります。
合併とは複数の会社が1つに統合することです。合併では従業員との雇用関係や、会社の債務がそのまま引き継がれる点で簡便です。
企業買収は、株式譲渡と事業譲渡があります。株式譲渡は、承継される側が持っている株式を承継する側に譲渡することです。従業員との雇用契約や会社の債務は従前の会社に残るので、簡易迅速な手続です。
事業譲渡は、会社の事業を他の会社に譲渡することです。譲渡する事業の範囲は自由に設定でき、雇用契約や債務の引き継をしないことができます。
第三者に事業承継をすることについて、従業員には早期に説明した方がよいですか。
第三者に対する事業承継があった場合、従業員の賃金などの労働条件は承継後の会社の経営状態によって変わってきます。
そこで、従業員への説明を早期にすると、不安や誤解を与えて、反発した従業員が大量に退職したり、労働組合を作って団体交渉を行ったりすることがあり、事業承継に失敗することがあります。
従業員への説明は最終的な契約を締結する直前や直後が望ましいと言えます。